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いきものがたり まとめ 11 (第15~16回) [いきものがたり]

 

2月8日 第15回

 

『第15回 』

桜が咲き始めます…。

 

(362) 「SAKURA」がリリースされる数日前、はじめて、テレビの全国放送に出演した。NHKのポップジャムだ。場所はNHKホール。「ここで紅白歌合戦もやるんだよ」と大人たちは緊張する僕らにハッパをかけた。

楽屋が大部屋で、サポートメンバーも一緒だった。ドラムを叩いてくれた原治武さんがそこで、まじまじと水野の顔をみつめ「まぁ、よく、ここまで来たよね。よかった」と言ってくれた。

ジブさんは厚木のライブハウスにいた頃から、僕らを知ってくれている地元の先輩だ。路上ライブで歌っている姿もみている。それが数年経って、あのわけのわからない大学生たちが、NHKのテレビの楽屋まできたことを、先輩として喜んでくれた。

いざ本番となって舞台袖で待つ。女性アナウンサーが自分たちを紹介してくれる。「つづいては、期待の新人。いきものがかりの皆さんです。」NHKホール3000人の観客に名前がコールされた。すると予想もしないことが起きた。客席から、笑い声が聞こえてきたのだ。

その日のNHKホールに僕らを知っていたひとなど、ほとんどいなかったのだろう。「いきものがかり」という名前を、初めて聞くひとばかりだったはずだ。自分たちでも認める、変なグループ名。観客の皆さんは、そのグループ名に「なんだそれ!」とおもわず笑ってしまったらしい。

今でも、NHKホールでの出演のときに、拍手だったり、歓声だったりをもらえると、そのときのことを思い出す。いきものがかりという名前を、知ってもらえるようになったんだなぁ、と毎度、思う。

「SAKURA」がリリースされて、1週間。はじめてランキングというものが出た。今にくらべれば、当時はまだCDという商品が売れていた頃だと思う。ランキングというものにも、今よりもう少し、意味があったか。初週のランキングは40位だった。

と言っても、そのランキングが高いのか、低いのか、正直当時の自分たちにはわからなかった。本家のオリコン(見たことあるひといるだろうか。業界誌。)は、見開き2ページで1位から100位までが載っている。すると当然、左ページには、1位から50位までが載ることとなる。

業界のひとは、新人はまずこの「左ページ」に載ることを目指せという。初週で40位だった僕らは、その「左ページ」に載れたわけだ。「左ページ載れたじゃないか、まずはよかったな」と言われるが、本人たちはやっぱりよくわかっていない。気にする余裕がない。はぁ…と頷くだけだ。

キャンペーンが始まって、日々をこなすことでいっぱいいっぱいだったと思う。もう次のシングルのレコーディングも始まっていた。今から考えれば、もっと先行きに不安になってもいいはずだったと思うけれど、よくも悪くも、いろんなことがよくわかっていなかった。

「SAKURA」が使われた電報のCMは流れ続けていて、3月の中頃まで流れると聞いていた。わからないなりにも「CMが終わっちゃったら、聞いてもらう機会も少なくなっちゃうのかなぁ」とぼんやり考えていた。

ちょうど同じころ、テレビのなかで、ワールドベースボールクラシックが始まる。初めての大規模な野球の世界大会。イチロー選手なども出場して、日本では大変な注目度だった。子供のころから野球好きな自分も、もちろんそれを見ていた。

いくつか劇的なドラマもあって、日本代表は準決勝へと勝ち進む。その試合中継だ。両代表チームの国旗の掲揚が終わり、さぁこれから試合だというところで、いったんCMになった。びっくりした。自分たちの曲が、流れてきた。電報のCMが流れたのだ。

「こんなタイミングで流れて、びっくりだなぁ。」と、それが自分の行く末を変える”事件”であるとは、そのときはまったく思わず、ぼんやり口を開けてテレビを見ていた。CMはその後の決勝の試合中にも流れた。「いいときに流れたね!」と、チームは無邪気に喜んでいた。

3月26日…だったと思う。その日僕らは、初めて路上ライブをした相模大野の駅に、巨大な桜のオブジェがあるということで、その前でデビュー曲を歌わせてもらうというイベントに出演した。パフォーマンスが終わって楽屋に戻るとスポーツ新聞が置いてあった。

僕らのことが記事になったという。ぱっと新聞を開くと、大きく「いきものがかり」という文字。WBCの中継でCMが流れたことをきっかけに、「SAKURA」に注目が集まったことが、でかでかと記事になったのだ。「問い合わせ殺到!」という、ベタすぎる文字がそこにあった。

「何か変わりそうだなぁ」と、まるで他人事のように楽屋でその記事を眺めていたのを覚えている。のんきだった。その夜に、その記事がヤフートップにあがった。世の中のひとの多くにとって、この時が「いきものがかり」というグループ名を、初めて目にした瞬間だったんじゃないだろうか。

親父は、ヤフートップに僕らの名が上がったときの、パソコンの画面を印刷してた。嬉しかったんだろう。

なにかが変わっていくことを意識するほどの余裕が、当時の3人にあったとは思えない。よくわからないままに、走り出してはいた。40位だった「SAKURA」のランキングが、7週連続で上がっていった。それは”ありえない”ことだった。でもそのときは、その意味をわかっていなかった。

 

今日はここまで。乱文、お粗末様でした。次回は『第16回』

 

 

2月20日 第16回

 

『第16回』

あの階段と、あの長椅子と。

 

(381) デビュー曲の「SAKURA」から大ブレイク…というフレーズで紹介してもらうことがたまにある。たしかに「SAKURA」は自分たちを知ってもらうきっかけになったけれど、実は、輝かしいビックヒットとまで言えるかというと、必ずしもそうではではなかったと思う。

オリコンランキングでいえば、最高位は17位。ベストテンにも入っていない。歌がつかわれた電報のCMは、東日本地域だけでの放送で、関西や九州では当初、ほとんど曲は知られていなかった。

それでも多くのひとにいまだに「あのころ、よく聴いたよ」と言ってもらえるのは、デビュー初期に、全国各地でキャンペーンをして、何度も人前で歌わせてもらったことと、そして幸運なことに、子供のころから憧れていた多くの音楽番組に出演を果たせたことが大きかったのだと思う。

当時、原宿のラフォーレの前で小さなステージを組んでイベントが開かれることが多かった。僕らもデビュー曲をプロモーションするため、急遽、そのラフォーレ前のステージで歌わせてもらうことになった。神奈川の片田舎の人間にすれば「原宿のラフォーレでライブ!?」と戸惑ったものだ。

都心でのライブということで、WBCの件で少し話題になったこの変な名前のグループの姿を、一度チェックしておこうと、いろんなひとたちが見に来てくれていたらしい。緊張したライブを終えて、ステージを降りると、ひとりの男性がそこに立っていた。

スタッフが早口で男性を紹介してくれたが、こちらはステージ直後で、なんだかよくわからないまま、挨拶をした。その男性が驚くことを口にした。「21日のミュージックステーション、出演してください。」ミュージックステーションのスタッフさんだった。

時を振り返って高校時代。吉岡はミュージックステーションを見ることができない頃があったと言う。笑ってしまう話なのだけれど、なぜかというと、「悔しくて、見れなかった」のだそうだ。なんで、そこに自分がいないんだろう、悔しい!と思っていたらしい。

高校生くらいになると、若くしてデビューした同世代のシンガーたちも当然ながらテレビに顔を出すようになる。「なんであそこに私はいないんだ!」憧れが強すぎて、そのステージが自分にとっては、まだ手の届かない夢でしかないことが、10代の少女なりに悔しかったそうだ。

当日、早朝にテレビ朝日のスタジオに入ると、文字通り”夢にまで見た”あの階段と、長椅子がそこにあった。リハーサルでそこに腰をかけると、なにやら隣の吉岡がプルプル震えている。

「お前、もう泣いてんのかよ!まだリハーサルだよ、はえーよ!」「だってさぁ…」笑った。スタジオはテレビで見るよりもずっとコンパクトで、そこにテレビでは姿の見えない100人規模の大勢のスタッフさんがセットの組みかえを忙しく行っていた。

「SAKURA」を歌った。当時は、少しでも覚えてもらいやすいようにと、吉岡は黄色いTシャツとジーンズというスタイルでどんな番組にも出ていた。スタイリストなどがつく機会はまだ少なく、衣装は自前のことも多かった。吉岡は古着屋を回ってTシャツを探したりしていた。

本番中、短いトークが終わり、さぁこれから自分たちが歌うというところでCMが入る。リハーサルから泣くぐらいだから、もちろん緊張しているのだけれど、CM中、吉岡が何を思ったか隣に座っていたタモリさんに「タモリさん!パワーください!」といきなり手を差し出した。びっくりした。

すると、もっとびっくりしたことに、タモリさんは「おう。」とさして驚くこともなく、吉岡の手を握ってくれ、念を送るようなポーズをしてくれた。そのまま自然と、今度は吉岡だけでなく、水野、山下にも同じように手を握ってくれる。感激してしまった。嬉しかった。

番組が終わると、出演者には通称Mステティッシュと呼ばれる、記念のティッシュボックスが渡される。「これが、あのMステティッシュか」と素直にはしゃぐ。まさに夢のような時間だったわけだが、家に帰ると急に不安になってきた。

ひとりぐらしを始めたばかりの都内のアパート。近くに線路があり、電車が通ると少し揺れる。さっきのキラキラしたテレビの世界から、急に現実に戻ってきた。Mステティッシュを眺めながら、えらいことになったなぁ、食っていけるのかなぁと、ひとりきりの部屋で、ぼんやり考えていた。

 

 

今日はここまで。乱文、お粗末様でした。次回は『第17回』

 

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2月15日は超ばかり発売一か月前だからでしょうか?
FMヨコハマを一日ジャック

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お疲れですかね~[いい気分(温泉)]?

 

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リーダーツイ 「このときに匹敵する、しっくり感。」

 

さまざま水面下でなにやらやっているようであります。。

いよいよデビュー10周年日まであと30日切りましたね~?


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